強迫性障害とは?症状・原因・治療法と仕事との向き合い方
目次
▲強迫性障害とは
強迫性障害(OCD:Obsessive-Compulsive Disorder)とは、自分でも自分でも「必要以上だ」「考えすぎかもしれない」と頭では理解していても、ある考え(強迫観念)が繰り返し頭に浮かび、それを打ち消すために同じ行動(強迫行為)を繰り返さずにいられない精神疾患です。
例えば
「手にバイ菌がついているかもしれない」という不安が強くなり、何度も手を洗ってしまう
「鍵を閉め忘れた気がする」と何度も確認してしまう
といった行動が代表的な例です。
厚生労働省の「こころもメンテしよう」では、強迫性障害は不安障害の代表例の一つとして紹介されています。
一方で、現在広く用いられている診断分類(DSM-5)では、強迫性障害は「強迫症および関連症群」として、不安障害とは別の枠組みで整理されています。
強迫性障害は、以下の2つが中心となって現れます。
強迫観念
繰り返し頭に浮かぶ、不快で不安を強める考え・イメージ・衝動
強迫行為
強迫観念による不安を和らげるために行う、反復的な行動や心の中での儀式的行為
これらによって
・1日1時間以上の時間を費やしてしまう
・強い苦痛を感じる
・仕事や日常生活に支障が出ている
といった状態が続く場合、診断上問題となります。
強迫性障害の主な原因
強迫性障害は、ひとつの原因だけで発症する病気ではなく、複数の要因が関係すると考えられています。
脳の働きの偏り
脳科学の研究では、眼窩前頭皮質や大脳基底核などを含む神経回路の働きに偏りがある可能性が示唆されています。
これにより、不安を過剰に感じやすくなったり、「確認をやめられない」状態が起こりやすくなると考えられています。
性格傾向
完全主義や責任感の強さなどの傾向が併存することがありますが、性格だけで発症が決まるわけではありません。あくまで複数要因の一つとされています。
ストレス
進学、就職、結婚、職場での人間関係など、強いストレスが発症や症状悪化のきっかけになることがあります。
遺伝的要因
家族内に強迫性障害の方がいる場合、発症リスクがやや高まることが報告されています。ただし、遺伝だけで決まる病気ではありません。
治療法
強迫性障害の治療には、科学的に有効性が確認されている方法があります。
認知行動療法(曝露反応妨害法)
不安を引き起こす状況にあえて直面し(曝露)、強迫行為を行わずに過ごす(反応妨害)ことで、不安が自然に下がる体験を積み重ねる治療法です。
国内外の治療ガイドラインでも第一選択とされています。
薬物療法
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が治療の中心となります。
効果が不十分な場合には、専門医の判断で他の薬剤を補助的に併用することがあります。
薬物療法と認知行動療法を併用することで、より高い効果が期待できます。
環境調整
過度な負担がかかる状況では、業務量や生活リズムを調整し、回復しやすい環境を整えることも大切です。
日常生活でできる工夫
治療と並行して、日常生活の中で以下の工夫を取り入れることで、症状との付き合いが楽になることがあります。
小さな成功を認める
「今日は確認回数が少し減った」「我慢できた時間があった」など、できたことに目を向けましょう。
生活リズムを整える
睡眠不足は不安を強めやすいため、できる範囲で規則正しい生活を意識します。
家族や周囲の理解を得る
強迫行為に巻き込まれない対応(一緒に確認しないなど)は、長期的な回復につながります。
緊張を和らげる工夫
深呼吸やストレッチなど、強迫行為を我慢しているときのストレスを和らげる方法を取り入れましょう。
強迫性障害のある方が受けられる就労支援
「このまま仕事を続けられるだろうか」と不安になるのは自然なことです。
強迫性障害は決して珍しい病気ではなく、全人口の約1~2%が生涯のいずれかの時点で経験するとされています。
就労移行支援
一般就労を目指す方を対象に、ビジネスマナー、PCスキル、履歴書作成、面接練習などを支援します。
職場体験や企業実習を通じて段階的に就職を目指せます。
就労継続支援A型・B型
一般就労が難しい場合の選択肢です。
A型:雇用契約を結び、給与を得ながら働く
B型:雇用契約なしで、体調に合わせた作業訓練を行う
ハローワークの専門支援
精神保健福祉士や就職支援ナビゲーターが配置され、
障害者雇用枠の紹介、職場定着支援、トライアル雇用などを行っています。
精神障害者保健福祉手帳
症状や通院状況により取得できる場合があります。
障害者雇用枠の活用や各種割引、税制優遇が受けやすくなります。
自立支援医療(精神通院)
通院医療費の自己負担が原則1割となり、治療を継続しやすくなります。
地域若者サポートステーション(サポステ)
15~49歳が対象の無料支援。
カウンセリングや職場体験を通じて、就労準備を進められます。
障害者職業センター
職業適性評価、職場適応訓練、リワーク支援などを実施しています。
相談支援事業所・地域生活支援センター
福祉サービスの利用調整や生活全般の相談に対応してくれます。
職場で注意しておきたいポイント
無理をしすぎない
強迫症状は気合いや根性で抑えられるものではありません。
体調に応じて業務量やペースを調整することが大切です。
早めにサインに気づく
「確認が増えている」「集中できない」などの初期サインを把握しておくことで悪化を防げます。
こまめに休憩を取る
不安と向き合い続けることで、脳は大きく疲れます。
短い休憩を積極的に取りましょう。
職場への伝え方と配慮事項
すべてを詳しく説明する必要はありません。
業務に関係する困りごとと、必要な配慮に絞って伝えることがポイントです。
・主治医の診断書や意見書を活用する
・産業医や人事との面談を行う
・支援機関に同席してもらう
などの方法を使いながら、無理のない働き方を相談していきましょう。
まとめ:一人で抱え込まずに
強迫性障害は、「やめたいのにやめられない」という強い苦しさを伴います。
それは性格の弱さではなく、病気の特徴です。
医療や公的支援を活用しながら、焦らず一歩ずつ進んでいくことが、回復への近道です。
困ったときは、ひとりで抱え込まず、支援につながってください。